オヤジは元気 病は気から 〜九死に一生を得る〜

私の父親さ、今年で76歳なんだけど健康そのものなの。おかげさまで。

お酒も飲まないし、タバコも吸わない

定年してからはテニスを毎日数時間して、

マラソンとか出ちゃうくらい

私より健康なんじゃない？って思うのよ

そんなオヤジさんも70歳になった時は相当ショックだったみたい。
70歳という数字にうろたえたのかなぁ

誕生日を過ぎてしばらくしたら

突然、「俺はもうすぐ死ぬ」って言い出したのよ。

最初はさ、心配したんだけどね、

医者がどこも悪くないって断言するのよ。
その辺の７０歳より健康！って太鼓判押されたの。

そしたらその医者をヤブ医者呼ばわりして寝込んじゃった。

どこも悪くないのよ。 

熱も無いし、よく食べるし。

でさ、色んな医者に行くよね。セカンドオピニオン

誰も悪い所見つけてくれないの

悪いところはないんだけどね。

あんなに好きだったテニスも辞めちゃって

毎日ベッドに横たわる日々
本当のヤブ医者も見つけて変な薬に高額払う始末

そのうちさ、会う人全員にいかに自分が死にそうかのアピール始めちゃってさ
「お元気ですか？」
「いや〜そろそろ死ぬんです。」
「え？！どこか悪いんですか？」
「いやね、原因はまだわからないんです。でも死ぬんです」

不幸があった人にまで「僕ももうすぐ死ぬんです」

これはいけません！ダメです！　失礼極まりない！
大人気ない！　不届きもの！
絶対にやめさせなくては！！！


兄弟で色々言うんだけどさ、全く聞かない。
頑固オヤジ。
そりゃね、７０過ぎた人間が５、６時間テニスし続けたら疲れるよ。
普通誰でも疲れるよ。
マラソン行ったら７０歳以上部門で参加者が他にいなくって
参加賞なのか一等賞なのかわかんない賞もらうよ。

でも当人は死ぬって決めたから毎日寝転がってるの
待っても待っても具合は悪くならないんだけどね

半年近く仮病で寝込んだ頃にゴディバの弟がいいこと思いついたのよ。

もう好きにさせてあげよう！
死ぬって言うなら受け入れよう！
それなら死ぬ準備をしよう！！！

というわけで兄弟４人で死ぬ死ぬ大作戦始めました。

まずは妹の家に居候していた父を私の家に呼びつけます。

「あーお父さん、来週ちょっとうちに来て娘見ててもらえると嬉しいんだけど・・・」
「どうかな・・・体調が・・・」
「もちろん生きてたらでいいのよ。も・し・生きてたらでいいの！
　死んだら無理だもんねぇ　がははは」

そしたらさ、来れるんだって。大丈夫なんだって。

うちに来たら弟二人と孫３人と私と父と計７人でとりあえずお食事会。
で、おもむろにゴディバ弟がパンフレットの束を出すんです。
お墓のパンフレット。
いや〜集めたわね！　さすが言い出しっぺ

和気藹々とみんなであーだこーだ選びます

ちょっと！このお墓は生きてるうちに予約すると３０％割引だって！
今がお買い時！
この棺桶がいいんじゃない？
素材はどれにしてもらう？
今背計るから動かないで！
墓石には何刻んで欲しい？　
墓地はどこがいい？　
アメリカ？日本？
お葬式はどんな感じにして欲しい？
仏教がいいの？　教会でやって欲しい？
今自分で一封書いといてよ。
お葬式で読んであげるから
埋める？火葬？
どっち？？？？


それから一度も言わないよ。　もうすぐ死ぬ